生産者STORY

 
浜富海苔STORY
 
有明産夜摘み一番海苔のこだわりのおいしさ
株式会社浜富海苔 代表取締役 濱基司さんに聞く
お茶に一番摘みがあるように、海苔にも一番摘みがあります。寒い海のなかで少しずつ育った芽においしさが凝縮。このおいしさをお客さまに。『輝き小町』には、こだわりがつまっています。
 
江戸時代から続く海苔の産地から
 
江戸時代から続く海苔の産地から
日本ではじめて海苔の養殖が始まったのが、現在の東京都・大森一帯でした。江戸時代初期の頃です。大森海岸周辺は、多摩川の河口があり、浅瀬が広く、おいしい海苔ができる条件がそろっていたといいます。それまで手に入りにくい高級食材だった海苔は、養殖により庶民にも手が届くようになりました。それ以来、大森は、日本でも有数の一大産地として栄えてきました。
昭和37年、埋め立てにより、大森の海苔養殖の歴史は閉じますが、大森周辺は、現在でも、海苔関係の業者が数多くあります。
株式会社浜富海苔もそのひとつ。創業は明治42年。当初は寒天や乾物の卸売業としてスタートし、昭和21年から海苔の卸売りを始めました。
「私どもがお届けしている『輝き小町』は、1年間でたった1日、その日に採った最上の海苔だけを提供しているんです」と、株式会社浜富海苔の現社長、濱基司さん。

 
海苔のおいしさが凝縮された逸品
 
海苔のおいしさが凝縮された逸品
『輝き小町』を1枚手に取り、炊きたてのご飯をのせ、口に入れると、磯の心地よい香りとともに、海苔が溶けるように口いっぱいに広がります。
「魚に油がのるように、海苔にも油がのるんですね。それが一瞬しかない。この時期を逃すとどんどんパサパサしてきて、固くなってくる。油がのったような海苔、それは、1日しかないんです」
その1日、生産者は、危険をおかして、夜、海苔を摘みます。夜摘み一番海苔。それが『輝き小町』です。
「海苔の細胞が寝ている間に摘む。だから、うまみ成分が壊れにくく、最高においしい海苔が採れるんです。冬の寒い海のなかで、ちょっとずつ、ちょっとずつ成長した芽。これがおいしい。海の温度が上昇すると海苔は一気に成長します。2番摘み、3番摘みになってくると、味も落ちてきてしまいます。夜摘んでもあんまり意味がないから、昼に採るわけ。夜摘み一番海苔を全国で手広くやろうと思っても数がない。海苔全体の収穫量の3〜4%ぐらいです。1年間流通させようと思ったら、在庫も抱えないといけない。だから、うちぐらいしかできない海苔なんです、『輝き小町』は」

 
焼き方にもこだわりを
 
焼き方にもこだわりを
最上の品質の海苔。その味わいを活かす。ここにも浜富海苔のこだわりがあります。
「保管している冷蔵庫から出して、乾燥させないと海苔は焼けません。少なくとも5日。大手の会社だと、翌日には納品しなくてはいけないので、焼いた海苔もストックで対応しています。しかしながら、焼いてから何日か経つと味が劣化していきます。私どもは、ストック対応をしない。焼きたてで出荷する。これをかたくなに守っています。そういう海苔屋さんはほかに聞いたことがありません。そこまでこだわっている。だから、こだわっているお客さんに買いに来ていただけるんです」
海苔を焼くにしても、たとえば、同じ浜で採れた海苔で、同じ等級であっても、生産者によって微妙に違いがあると、濱社長は言います。
「生海苔の状態で10%以上ある水分を、焼いて5%前後ぐらいまでにします。同じ等級であれば、品質にばらつきがないように、選別して焼いていかなければいけません。焼く温度や時間をつねに調節して、いい焼き上がりを目指しています」と、焼き工程を管理している担当者が話してくれました。
焼かれた海苔は、すぐ真空パックに。パックは、お客さまが利用しやすいよう、チャックがついている袋を使い、材質も紫外線を排除する素材になっています。
「見た目は変わらないですけれども、一つひとつ、選び抜いたものを使っています。いい材料を使っても、ここから出荷して、2か月、3か月先にお客さまが食べたらおいしくなかったっていうのでは、意味がないですからね。できるだけ新鮮さを保ちたいんです」

 
海の宝石、『輝き小町』
 
海の宝石、『輝き小町』
どうしてそこまで海苔にこだわるのでしょうか?
「大量に仕入れて大量に販売するっていうわけではなくて、お客さんに喜ばれるものをご提供したいんです。喜びを持っていただければ、つぎの世代にもつながっていきます。私が辞めたあとでも、『あそこの海苔はおいしいから』って言っていただける。お母さんから娘さん、お孫さんまで、顔の見えない方々に売っていると思っています。それから、やっぱり自分自身が食べておいしいものですね。食べ物はおいしくなくちゃいけない。そう思っています。昔、海苔が不漁でおいしいものが採れないときがありました。そのときは、販売を断念しました。『商売しないの?』って言われましたけど、私どもは、そのくらい、意地っ張りです。おいしいものしか売らない。1回でもおいしくない海苔を売ってしまったら、10年、浜富海苔の歴史がなくなってしまったも同然になってしまいます。規模は小さくても、浜富海苔は、小粒でピリリと辛いという、存在価値がある海苔屋なんだと、そういう理念ですね」と、濱社長。
「九州の海、有明に、夜摘み一番海苔を収穫する頃に行くと素晴らしいんです。海苔がつやつやして輝いている。海苔がいいときは、光沢がありますから、光が射し込むとキラキラ輝くんですね。海の宝石です」
『輝き小町』という名前は、濱社長が名付け親です。海の宝石のように輝く海苔をイメージしてつけたと教えてくれました。素晴らしい素材のおいしさをお客さまにお届けしたい。濱社長の情熱が結実したのが、極上の逸品、『輝き小町』です。

 
海苔の値付けを経験して
 
海苔の値付けを経験して
東京・大森にある株式会社浜富海苔の倉庫に行くと、海苔の大きな箱が所狭しと保管されています。
「岡山、山口、福岡、佐賀……、ここには、いろんな産地の海苔が保管されていますけれども、自分で仕入れて自分で売っていますから、どこの産地のどの生産者も、全部、わかってます」と濱社長。
海苔は、収穫された産地で入札され、競り落とされていきます。
兵庫、岡山、大阪、和歌山、愛媛、広島、山口、福岡、佐賀、大分、熊本、長崎……。
「ほとんど東京にはいないですね。1か月のうち、25日ぐらい産地を回っています」
入札の会場に行くと、収穫された浜や生産者ごとに、海苔が並べられ、値が付けられていきます。
「3000種類ぐらいありますから、最初は全部同じに見えます。それを一瞬で判断して価格をつけなければいけない。たとえば、1枚で9銭、値付けが違っただけでも、1トン買ったら3000万円違ってくる。その一瞬です。いちいち味わってる時間もありません。海苔の仕入れ担当者は神経が続かないって言われてますよ」と濱社長。
海苔の仕入れは、細かい神経と判断力が要求されます。
「海の状況も判断材料になります。これまでのことを知ってなくてはいけませんし、これから先の気象も見ないといけない。来月は暖かくなりそうだとか、嵐があるとか。それから潮の流れもね。これから収穫量が上がるだろうから、安く買っておこうかなとか」

 
安くておいしいが一番
 
安くておいしいが一番
長年、海苔の入札を経験。海苔について、濱社長の右に出る者はいないほど。「海苔博士」とも言われています。毎年開催される海苔のテイスティングコンテストでは、何度も優勝しました。
「だから、お客さまのニーズに合わせた海苔が提供できます。お寿司の海苔で、こういうふうに巻いて、何時間後にいただく場合には、この海苔がいいですよとか、用途によって見分けられます。安いからダメっていうわけでもありません。基本的においしいということが大事なんです」
おいしいものをお客さまにお届けしたい。その思いから、有明産夜摘み一番海苔『輝き小町』だけでなく、値ごろ感があっておいしい海苔や、特殊な製法で海苔に文字が書かれたプリント海苔も開発しました。
「たとえば外食でも、安いとこで食べることもあれば、高いとこで食べることもあります。どちらにしてもおいしければ満足できる。2万円払っても、1万円払ってもね。そういうものだと思うんです。だったら、安くておいしいものが一番いい。だけど、この両立は、なかなかむづかしい。そのために、たとえば旅館やホテルの方にも、安いものを仕入れるんじゃなくって、枚数は少なくても、おいしいほうがいいんじゃないですかって言うんです。8枚を5枚にする。だけどおいしい。そのほうがお客さまは喜ぶはず。おいしくないものがいっぱいあったって喜ばないですよね。だから、とにかくおいしくなければいけない」と濱社長は言います。
安かろう悪かろうでは、お客さまは離れていってしまう。安くてもおいしい。それが株式会社濱富海苔のポリシーだと説明してくれました。